相続した実家の鍵を預かったまま、気づけば1年。固定資産税の納税通知書だけが毎年届き、家の中はしばらく見ていない。「とりあえずそのまま」は、何も起きていないように見えて、実際には毎年お金と家の価値が少しずつ減っていく状態です。どこから損が出て、どの段階で行政が動くのかを順に見ていきます。
全国の空き家は900万戸。実家の空き家化は珍しくない
総務省の調査によると、全国の空き家は900万2千戸、住宅全体に占める割合(空き家率)は13.8%で、いずれも過去最多・過去最高です(2023年10月1日現在)。実家の空き家化は、いまや珍しいことではありません。だからこそ、国も対策を強化しています。
放置コストは、何もしなくても毎年積み上がる
空き家は「何もしていない」つもりでも、持っているだけで毎年お金が出ていきます。
| 費目 | 内容 | 発生の仕方 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 住まなくても毎年課税 | 毎年 |
| 管理の手間・費用 | 換気・通水・草刈り・巡回(自分で通う交通費、または管理サービス代) | 毎年・随時 |
| 火災保険料 | 人が住まなくなると住宅向けの契約から外れ、保険料や加入条件が変わることがあります。住まなくなった時点で契約先に連絡・確認を | 毎年 |
| 傷みによる価値下落 | 人が住まない家は劣化が早い=将来の売却額・解体費に影響 | じわじわ |
| (勧告を受けると)税優遇の解除 | 後述の「勧告」で固定資産税が上がりうる | 勧告時 |
勧告を受けると、住宅用地の優遇が外れて税が上がる
放置された空き家には、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)という法律が関わります。2023年(令和5年)12月に改正され、対策が強化されました。
行政の対応は、空家等の状態に応じて、市区町村が「管理不全空家等」または「特定空家等」と判断(認定)したところから始まります(空家法13条・22条)。段階は2つの区分で異なります。
- 指導放置すれば特定空家等になるおそれがある状態として、市区町村から指導を受ける
- 勧告従わないと勧告を受け、住宅用地特例の対象から外れる。命令・代執行の規定はない
- 助言・指導倒壊のおそれなど、放置が不適切な状態として、市区町村から助言・指導を受ける
- 勧告従わないと勧告を受け、住宅用地特例の対象から外れる
- 命令勧告に従わず状態が改善されないとき。違反すると50万円以下の過料(空家法30条)
- 行政代執行行政が代わりに撤去・解体などを行う。費用は所有者の負担
「管理不全空家」が新設され、倒れそうになる前から対象になりうる
| 区分 | どういう状態か |
|---|---|
| 特定空家等 | 倒壊のおそれ、著しく衛生上有害、著しく景観を損なう など、放置が不適切な状態 |
| 管理不全空家等(改正で新設) | そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態 |
土地の固定資産税は、計算上最大で約4.2倍まで上がりうる
住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする「住宅用地特例」があります。小規模住宅用地(1戸あたり200㎡以下の部分)は課税標準が価格の6分の1、それを超える一般住宅用地は3分の1に軽減されます。
ところが、特定空家等・管理不全空家等と判断され、市区町村から「勧告」を受けると、この特例の対象から外れます。ただし、外れた土地は商業地等と同じ負担調整措置の対象となり、課税標準は価格の7割(7/10)が上限です。そのため、土地の固定資産税は計算上、最大で約4.2倍(0.7÷1/6)になります。
従わなければ命令、行政代執行へ。費用は所有者の負担
特定空家等で、勧告に従わず状態が改善されないと、命令、それでも改善されなければ行政代執行(行政が代わりに撤去・解体などを行う)に進むことがあります。命令に違反すると50万円以下の過料(空家法30条)の対象です。そして、代執行の費用は所有者が負担します。「放置していたら、行政に解体されたうえ費用を請求された」という事態も、制度上あり得ます。管理不全空家等には、命令・代執行の規定はありません。
災害時などは、命令を経ずに行う緊急代執行や、所有者が分からないときの略式代執行もあります(空家法22条10〜11項)。
倒壊・放火・雑草。近隣への被害は所有者の責任になる
税金や行政措置だけではありません。空き家は近隣への実害が起きやすく、その責任は所有者に及びます。
- 倒壊・落下:屋根・外壁・塀が崩れて隣家や通行人に被害 → 損害賠償の可能性。
- 放火・不法侵入:管理されていない空き家は犯罪の標的になりやすい。
- 雑草・害虫・悪臭:近隣の生活環境を損ない、苦情・関係悪化に。
こうしたリスクは、放置期間が長いほど高まります。
放置を止める出口は、管理する・売る・解体するの3つ
放置コストとリスクを止めるには、次の3つのどれかを選びます。
- 当面持ち続ける管理する(遠方なら空き家管理サービス)
- 使わない売る(古家付きのまま買取業者に売れる場合も)
- 建物が危険解体して更地に(解体費と住宅用地特例に注意)
- 管理する:当面持ち続けるなら、最低限の管理(巡回・換気・通水)で、劣化と、管理不全と判断されることを防ぐ。遠方なら空き家管理サービス。
- 売る(買取を含む):使わないなら手放す。古家付きのまま買取業者に売れる場合もある。相続した空き家は、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(相続人3人以上なら各2,000万円)を控除できる特例があります。売却は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、2027年12月31日までの譲渡が対象です。使えるかどうかは税理士へご確認ください(国税庁 No.3306)。
- 解体する:建物が危険なら解体して更地に。ただし解体費(木造30坪で本体約90〜180万円が目安/「実家じまいの費用」参照)と、更地化で住宅用地特例が外れる点に注意。
じまい堂は買取業者などの情報をご案内する立場で、売買の条件交渉・契約には関与しません。どれが向くかは、立地・築年・急ぎ度で変わります。放置リスクを診断するでは、あなたのケースに向く出口と、該当する管理・買取・解体の業者をお伝えします。
次に知っておきたいこと:管理する・売る・解体する、どれを選べばいいか
放置のコストが分かると、次は「では自分の家はどれを選ぶべきか」が問題になります。立地・築年・残置物・急ぎ度から出口の当たりをつける判断マトリクスは、「実家を売る・貸す・解体、どれが得?出口の決め方」にまとめています。
ほかに気になることがあれば:
- 当面は管理して持ち続けたい →「遠方の空き家を管理する方法」
- 売りに出しても買い手がつかない →「田舎の実家が売れない…処分の選択肢」
出典(取得日 2026年10月11日)
- 空き家数・空き家率(900万2千戸・13.8%、2023年10月1日現在):総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)」(一次出典)。
- 空家等対策の推進に関する特別措置法・令和5年改正(管理不全空家等の新設、2023年12月13日施行):国土交通省「空家法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」、条文はe-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」(一次出典)。
- 住宅用地特例(小規模住宅用地は課税標準1/6)・勧告による特例除外:e-Gov法令検索「地方税法」第349条の3の2(一次出典)。特例が外れた土地は商業地等として負担調整措置の対象となり、課税標準は価格の7/10が上限(附則18条5項)。このため「最大約4.2倍」(0.7÷1/6)が計算上の上限であり、実額は評価額・負担水準・自治体で変動する。
- 管理不全空家等の指導→勧告(13条)、特定空家等の助言・指導→勧告→命令→行政代執行(22条、緊急代執行・略式代執行は10〜11項)、命令違反の過料50万円以下(30条)と費用の所有者負担:空家法(e-Gov上記)および国土交通省 空家法関連情報。
- 相続した空き家の3,000万円特別控除:国税庁 タックスアンサー No.3306(一次出典)。
制度・税制は改正や自治体の運用で変わります。勧告の有無や税額など個別の判断は、自治体・専門家に最新の情報をご確認ください。じまい堂は制度の一般的な概要を情報提供する立場で、個別の判断は専門家におつなぎします。