不動産会社から売り出し価格の目安を聞くと、次に浮かぶのは「売ったら手元にいくら残るのか」です。親が何十年も前に手に入れた家だと、買ったときの書類が見つからないこともよくあります。この記事では、譲渡所得の考え方と、空き家特例に当てはまりそうかを自分で確かめるための要件を整理します。実際に特例を使えるか、税額がいくらになるかは個別の判断になるため、最終的には税理士に確かめてください。


税金の対象は売値ではなく、利益(譲渡所得)

売却で税金の対象になるのは、売った金額そのものではなく、利益(譲渡所得)です。おおまかな式は次のとおりです。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除

  • 取得費:その不動産を手に入れたときの価格+取得の費用。相続の場合は、被相続人が買ったときの価格を引き継ぎます。取得費が不明なときは、売却価格の5%を取得費とみなす方法(概算取得費)もあります。
  • 譲渡費用:売るためにかかった費用(仲介手数料、解体費、測量費など)。
  • 特別控除:条件を満たせば、後述の空き家3,000万円特別控除などを差し引けます。
譲渡所得の考え方
  1. 売却価格売った金額そのものは税の対象ではない
  2. 取得費・譲渡費用を引く取得費は被相続人が買ったときの価格を引き継ぐ
  3. 特別控除を引く(該当すれば)空き家3,000万円特別控除など
  4. 残りが譲渡所得売った年の1月1日時点で所有5年超か以下かで税率が変わる

相続した空き家なら、最高3,000万円を差し引ける特例がある

正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。相続した実家(空き家)を一定の条件で売ると、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。使えるかどうかで税負担が大きく変わるため、まず要件を確かめます。

主な要件(ほかにも要件があります。すべて満たす必要がある・2026年10月時点の概要)

  • 被相続人が亡くなる直前まで、その家に一人で住んでいた(原則。老人ホーム入所などの例外あり)
  • 家屋が1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたものである
  • 区分所有建物(マンション等)ではない
  • 相続時から売却時まで、事業・貸付・居住に使っていない(空き家のままだった)
  • 売る時点で耐震基準に適合している家屋を売るか、家屋を取り壊して更地で売る(2024年1月1日以後の売却は、買主が売った年の翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをする場合も対象)
  • 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
  • 売却代金が1億円以下である(同じ相続で取得した家や敷地を分けて売ったときは合算して判定)
  • 売る相手が、配偶者・親子など特別の関係がある人ではない
  • 適用対象期間(平成28年4月1日〜令和9年12月31日)の譲渡である

相続人が3人以上なら、一人あたりの控除は2,000万円

令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合、一人あたりの控除額は2,000万円になります。


取得費の不明、解体費、払った相続税も売却時の税に関わる

  • 取得費が分からない:古い実家では購入時の資料が残っていないことが多く、取得費の証明が税額を左右します。概算取得費(5%)を使うか、当時の資料を探すかで結果が変わります。
  • 解体して売る場合の費用:解体費は譲渡費用になり得ますが、要件があります。空き家特例で「更地で売る」を選ぶ場合の段取りとも関係します(解体費の目安は「実家の解体費用の相場」)。
  • 相続税を払っている場合:相続税の申告期限の翌日から一定期間内に売ると、払った相続税の一部を取得費に加算できる特例(取得費加算)があり、空き家特例とは選択関係になることがあります。

次に知っておきたいこと:売る前に、実家の名義は変わっている?

売却の手続きに進む前に、実家の名義が亡くなった親のままになっていないかを確かめておきます。名義変更(相続登記)は2024年4月から義務になり、期限もあります。やり方と、自分でできるか司法書士に頼むかの見分け方は「相続登記の義務化、実家の名義変更のやり方と期限」にまとめています。

ほかに気になることがあれば:


出典(取得日 2026年7月14日)