葬儀が終わって実家に戻ると、冷蔵庫の中身、届き続ける郵便、役所から渡された書類の束が一度に目に入ります。全部を今すぐ片付けなければいけない気がしてきますが、そうではありません。死亡届(7日以内)や年金・健康保険の届出(10〜14日)は、葬儀社や役所の案内に沿って進むことがほとんどです(年金の届出は、マイナンバーが年金事務所に登録されていれば不要な場合もあります)。その先、相続で期限があるのは4つ。まずその4つを確認し、それ以外は後回しにしてください。
相続の期限は4つ。いちばん短いのは3か月
数え始めは「亡くなった日」ではなく、原則として相続の開始を知った日(の翌日)です。
- 3か月以内相続放棄・限定承認負の遺産を引き継がない選択をする場合
- 4か月以内準確定申告その年に一定の所得があった場合
- 10か月以内相続税の申告・納付正味の遺産額が基礎控除額を超える場合
- 3年以内相続登記(義務)不動産を相続した場合
| 期限の目安 | 手続き | 必要になる人 |
|---|---|---|
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認 | 借金や保証など、負の遺産を引き継がない選択をする場合(家庭裁判所に申述。民法915条) |
| 4か月以内 | 準確定申告 | 亡くなった方に、その年の一定の所得があった場合 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付 | 正味の遺産額が基礎控除額を超える場合 |
| 3年以内 | 相続登記(義務) | 不動産を相続した場合。2024年4月から申請が義務 |
知った日を入れると、この4つの期限がそれぞれ何月何日になるかを期限カレンダーで確かめられます。
この4つのどれが自分に当てはまるかは、相続人の人数と、不動産や借金があるかどうかで決まります。自分のケースで何を急ぐかを確かめたいときは、やることの順番を診断するで整理できます。
借金があるかもしれないなら、3か月以内に相続放棄を検討する
亡くなった年に収入があったなら、4か月以内に準確定申告
亡くなった方に事業所得・不動産所得・一定の年金収入などがあった場合、相続人が代わりに所得税を申告・納付します。亡くなったのが1〜3月の場合は、前年分の確定申告が済んでいないと、前年分も必要になることがあります。必要かどうか、税額がいくらになるかは個別に変わります。
財産が基礎控除を超えるなら、10か月以内に相続税の申告
相続税がかかるのは、生前贈与の加算や借入金・葬式費用の差し引きを反映した正味の遺産額が、基礎控除額を超える場合です。
不動産の名義変更は3年以内。2024年から義務になった
実家の名義を相続人に変える相続登記は、2024年4月1日から申請が義務になりました。不動産を相続で取得したと知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象です。義務化の前に相続して名義を変えていない不動産も対象で、原則2027年3月31日までが目安です。遺産分割がまとまらないうちは、「相続人申告登記」で申請義務を果たせる場合があります。やり方や必要書類、自分でできるかどうかは「相続登記の義務化、実家の名義変更のやり方と期限」にまとめています。
片付けで急ぐのは、通帳・印鑑・権利証などの書類だけ
家の片付け(遺品整理)は、手続きとは別に、自分のペースで進めてかまいません。ただし、次のものだけは先に探して一か所にまとめておきます。上の4つの手続きで必要になるからです。
- 通帳・印鑑・キャッシュカード
- 不動産の権利証(登記識別情報)
- 保険証券、年金や各種契約の書類
片付けを始める時期は、親の家が賃貸か持ち家か、相続放棄を考えているかで変わります。分かれ目ごとの考え方は「遺品整理はいつから始める?四十九日・賃貸の退去・相続放棄との関係」にまとめています。
手が止まってしまうときの進め方は「実家の片付けが進まない…」に、量が多いときや実家が遠いときに業者へ頼む場合の費用は「実家じまいの費用」にまとめています。兄弟がいる場合は、片付けの分担や費用でぶつかりやすいので、「兄弟で実家じまいが揉める前に」も先に目を通しておくと安心です。
家をどうするかは、急がずに選択肢だけ知っておく
相続した家を売るか、貸すか、解体するか、持ち続けるかは、上の期限とは別に決めてかまいません。ただ、相続税の納税資金のために売却を考える場合などは期限が関わってくるので、選択肢だけは早めに知っておくと慌てずに済みます。それぞれの向き・不向きは「出口の決め方」に、空き家のまま置いておくとかかる費用は「空き家を放置するとどうなる?」にまとめています。
次に知っておきたいこと:誰に、何を、どの順番で頼むか
期限が分かると、次は「この手続きは誰に頼めばいいのか」「何から手を付けるのか」が気になってくるはずです。司法書士・税理士・役所・金融機関に何をどの順番で頼むかは、「実家の相続手続き 全体の順番ロードマップ」で時系列にまとめています。
ほかに気になることがあれば:
- 抜け漏れがないか確かめたい →「実家じまい やることチェックリスト」
- 実家じまい全体の流れを知りたい →「実家じまいの進め方 完全ガイド」
出典(取得日 2026年10月11日)
- 年金の死亡届(厚生年金10日以内・国民年金14日以内。日本年金機構にマイナンバーが収録されていれば原則不要):日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」。
- 相続放棄の熟慮期間(知った時から3か月以内・家庭裁判所への申述):民法第915条・第938条=e-Gov法令検索「民法」、裁判所「相続の放棄の申述」(一次出典)。期間の伸長(民法915条1項ただし書)、遺品の処分による単純承認(民法921条1号)も同じ民法による。
- 準確定申告(知った日の翌日から4か月以内):国税庁 No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」(一次出典)。
- 相続税の申告・納付(知った日の翌日から10か月以内):国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」。基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)・正味の遺産額による判定:国税庁 No.4102「相続税がかかる場合」(一次出典)。
- 相続登記の義務化(2024年4月1日施行・3年以内・10万円以下の過料・過去の相続にも遡及・相続人申告登記):不動産登記法第76条の2、法務省「相続登記の申請義務化について」(一次出典)。