葬儀が終わり、親戚が帰ったあとの実家。冷蔵庫には食べかけの総菜が残り、玄関には親の靴がそのまま並んでいます。「早く片付けないと」と思う一方で、手を付けていいのか、いつまでに終えればいいのかが分からない。答えは家ごとに違いますが、分かれ目は主に2つです。
始める時期は「相続放棄」と「賃貸か持ち家か」で決まる
- 相続放棄を考えている3か月の判断が済むまで、捨てる・売る・譲るは控える
- 親が賃貸に住んでいた契約が続くあいだ家賃がかかる。まず管理会社・大家に連絡
- 持ち家で、相続放棄はしない急がなくてよい。四十九日や帰省など家族が集まる時を区切りに
| 家と相続の状況 | 始める時期の考え方 |
|---|---|
| 相続放棄を考えている | 放棄するかどうかを決めるまで、遺品の処分は控える。見て確かめるのはかまわない |
| 親が賃貸に住んでいた | 解約するまで家賃がかかるので、早めに管理会社・大家と退去の段取りを決める(放棄を考えているなら、その前に確認) |
| 持ち家で、相続放棄はしない | 期限はない。戸締まりと貴重品の確保だけ先に済ませ、片付けは自分たちのペースで |
自分がどれに当たるか、ほかに急ぐことがないかを確かめたいときは、今やることの順番を診断するで整理できます。
相続放棄を考えているなら、3か月の判断が済むまで捨てない・売らない
親に借金や連帯保証があるかもしれないときは、相続放棄という選択肢があります。期限は、自分が相続人になったと知った時から3か月以内です(民法915条)。
この期間に気をつけたいのが片付けです。遺品を売る・譲る・捨てるなどの処分をすると、相続を受け入れた(単純承認した)とみなされ、放棄できなくなることがあります(民法921条1号)。
一方で、何もしてはいけないわけではありません。
- 財産を調べることはできます。放棄するかを決める前に、相続財産を調べられると民法に定められています(民法915条2項)。通帳や郵便物を見て、借金があるかを確かめるのはこの段階の仕事です。
- 家を傷めないための行為(保存行為)は、処分に当たらないとされています(民法921条1号ただし書)。ただ、どこまでが保存に当たるかは個別の判断です。腐る物の始末なども含め、迷ったら手を付ける前に専門家に確かめてください。
- 3か月で調べきれないときは、家庭裁判所に申し立てて期間を延ばせる場合があります(民法915条1項ただし書)。
放棄すべきかどうかは個別の判断なので、弁護士・司法書士、または家庭裁判所の窓口で確かめてください。期限のある手続きの全体は「親が亡くなった後、家の片付けと手続きの全体像」にまとめています。
賃貸なら、契約が続くあいだ家賃がかかる。まず管理会社に連絡する
親が賃貸住宅に住んでいた場合、借りる権利(賃借権)と部屋に残された家財の持ち主としての立場は、相続人に引き継がれます(国土交通省)。契約は亡くなっただけでは終わらないので、解約して部屋を明け渡すまで家賃がかかり続けます。
だから賃貸では、持ち家より早めに動く理由があります。
- 管理会社・大家に亡くなったことを伝える:解約の手続き、明け渡しの期日、原状回復の範囲を確かめます。
- 退去日から逆算して片付けの日程を組む:自分たちで運び出す物と、業者に頼む物を分けます。
- 公営住宅の場合は、自治体ごとに手続きが決まっているので、住宅の管理窓口に確かめます。
持ち家なら急がなくていい。四十九日や帰省を区切りにする
持ち家で相続放棄もしないなら、遺品整理に期限はありません。気持ちの整理がつかないうちに無理に進めると、あとで「捨てなければよかった」が残ります。
家族が集まる機会を区切りにすると、話がまとまりやすくなります。
- 四十九日の法要:親族がそろうので、形見分けの希望を聞く機会にできます。
- お盆や年末年始の帰省:遠方の兄弟とも、同じ部屋を見ながら話せます。
ただし、遺品は相続の対象になる財産です(民法896条)。価値のある物を分けるときは、相続人みんなで話してからにします。
もう一つ、売るつもりがあるなら知っておきたい期限があります。相続した空き家を売るときの税の特例(被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除)は、相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件の一つです。昭和56年5月31日以前に建てられた家であることなど、ほかにも要件があります(国税庁 No.3306)。片付けが長引くと売却の時期も遅れるので、売る可能性があるなら、この期限から逆算して片付けの区切りを決めます。要件の確かめ方は「実家を売った時の税金と3000万円特別控除(空き家特例)」に、判断は税理士へ。
どの場合も、書類と貴重品だけは先に探しておく
いつ片付けを始めるにしても、次の物だけは早めに探して一か所にまとめます。相続の手続きで必要になるからです。
- 預金通帳・キャッシュカード・印鑑
- 権利証(登記識別情報)・固定資産税の納税通知書
- 保険証券、年金の書類
- 遺言書(封がしてあれば開けずに保管。扱いは「実家の相続手続き 全体の順番ロードマップ」へ)
探すことは処分ではないので、相続放棄を考えている場合でも進めてかまいません。
業者に片付けを頼むときは、家庭のごみの回収には市区町村の許可が要ります。実家のある市区町村の廃棄物担当窓口で、許可業者の一覧を確かめられます。
次に知っておきたいこと:遺品整理は、いくらかかるのか
始める時期が決まると、次は費用です。遺品整理の料金は間取りと物の量でおおよそ決まり、自分で物を減らしておくと下げられます。間取り別の目安と、金額が上下する条件は「遺品整理の費用相場」にまとめています。
ほかに気になることがあれば:
- 大量の不用品を、どの手段で減らすか →「実家の大量の不用品を処分する方法と費用」
- 実家が遠くて通えない →「遠方の実家をどう片付ける?」
出典(取得日 2026年10月11日)
- 相続の承認・放棄の期間(知った時から3か月以内)、期間の伸長、承認・放棄前の相続財産の調査:民法第915条第1項・第2項=e-Gov法令検索「民法」(一次出典。2026年6月24日施行版で確認)。
- 相続財産の処分による単純承認と、保存行為の除外:民法第921条第1号(同上)。
- 相続人が被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すること:民法第896条(同上)。
- 相続放棄の申述の手続き:裁判所「相続の放棄の申述」(一次出典)。
- 賃借人の死亡後、賃借権と残置物の所有権が相続人に承継されること:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定について」(令和3年6月7日)(一次出典)。
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例の期限・建築時期の要件:国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(一次出典)。
- 四十九日や帰省を区切りにする進め方は、法律の定めではなく一つの目安です。