入所や入院が決まると、手続きと荷造りに追われ、実家の雨戸は閉まったままになります。冷蔵庫の中身、届き続ける郵便、伸びてくる庭の草。誰が見に行くのかも決まらないまま、数週間が過ぎていく。そこで「もう片付けて売ったほうがいいのでは」と考えがちですが、先に確かめることがあります。


親が存命のうちは、家は親のもの。子の判断だけでは処分できない

親が生きている間、実家は親本人の財産です。子が「片付けよう」「売ろう」と思っても、本人の意思なしに勝手に処分することはできません。

  • 家財を捨てる・家を売るには、原則として所有者である親本人の同意が必要です。
  • 親の判断能力が十分でない場合は、本人に代わって財産を管理する法律上の仕組み(成年後見制度など)が関わってきます。個別性が高く、専門家の領域です。成年後見人が付いても、施設入所中の実家を売る・貸すには家庭裁判所の許可が要ります(裁判所)。判断能力が下がる前に打てる備え(任意後見・家族信託など)は「親が認知症になる前に|実家と財産で今できる備え」で整理しています。

当面の方針は「家に戻る可能性」で3つに分かれる

「家に戻る可能性」で分かれる当面の方針
  • 戻る可能性がある(リハビリ・一時入所など)現状維持+最低限の管理。処分は急がない
  • 戻る可能性は低いが、本人の意思確認ができる本人と相談しながら、片付け・出口をゆっくり検討
  • 判断能力の低下で意思確認が難しいまず専門家に相談(成年後見など)。処分は慎重に
状況当面の方針の傾向
戻る可能性がある(リハビリ・一時入所など)家は現状維持+最低限の管理。処分は急がない
戻る可能性は低いが、本人の意思確認ができる本人と相談しながら、片付け・出口をゆっくり検討
判断能力の低下で意思確認が難しいまず専門家に相談(成年後見など)。処分は慎重に

自分のケースがどれに当たるか迷うときは、当面の方針を診断するで、在宅復帰の可能性と誰が管理できるかから当面の選択肢を整理できます。住民票を施設に移すかどうかは、施設と市区町村の窓口に確認を(住所地特例。厚生労働省)。


住まなくなった家は傷む。換気・郵便・庭・保険は続ける

戻る可能性があってもなくても、人が住まなくなった家は急速に傷みます。「当面そのまま」を選ぶなら、次の管理は続けます。

  • 換気・通水:締め切ると湿気・カビ・配管の劣化が進む。目安として月1回程度の換気・通水が理想。
  • 郵便・書類の確認:郵便物が溜まると空き家だと分かり、防犯上も不安。郵便局に転居届を出すと、届出日から1年間、新しい宛先へ転送されます(日本郵便)。
  • 庭・外回り:草木の繁茂は近隣トラブルのもと。
  • 火災保険・固定資産税:住まなくなっても支払いは続く。保険の条件(空き家扱い)も確認。

本人と話せるうちに、一緒に生前整理を進める

親の判断がしっかりしているうちなら、本人と一緒に少しずつ片付ける「生前整理」は有力な選択肢です。

  • 本人が「これは残したい/これはいい」を選べるので、あとで子が「捨てていいか」を悩まずに済みます。
  • 貴重品・権利証・通帳などの保管場所を本人から聞いておくと、将来の手続きが格段に楽になります。
  • 量が多い・遠方などで難しければ、生前整理を手伝う業者に部分的に頼む選択肢もあります。ただし、処分を伴う場合は、市区町村の許可を持つ業者か確認を。迷うときは、実家のある市区町村の廃棄物担当窓口で許可業者の一覧を確認できます。

親にとっても子にとっても、気持ちのうえで手を付けにくいテーマです。「捨てる判断は先送りしていい」という進め方は「実家の片付けが進まない…」にまとめています。


売る・貸す・解体は、情報だけ集めておく

すぐに売らない場合でも、将来の出口(売る・貸す・解体・保有)の選択肢を知っておくと、いざ決めるときに慌てません。ただし処分は本人の資産の問題です。いまは情報収集にとどめ、実行は本人の意思・状況が整ってからにします。

親本人が売るときの税の特例(居住用財産の3,000万円特別控除)には「住まなくなってから3年目の年末まで」の期限があります(国税庁 No.3302)。売却を考え始めたら早めに税理士へ。親の存命中に貸すと、相続後に空き家の特例が使えなくなる場合があります(国税庁 No.3306)。判断は税理士へ。

出口ごとの向き・不向きは「実家を売る・貸す・解体、どれが得?出口の決め方」に、空き家のまま置いておくとかかるコストは「空き家を放置するとどうなる?」にまとめています。


次に知っておきたいこと:親の判断能力が下がったら、家はどうなるのか

本人の同意がなければ家を動かせない、と分かると、次に浮かぶのは「もし親が認知症になったら、誰も手を付けられなくなるのでは」という心配です。判断能力が下がると何ができなくなるのか、その前に打てる備え(任意後見・家族信託など)の違いは、「親が認知症になる前に|実家と財産で今できる備え」にまとめています。

ほかに気になることがあれば:


出典(取得日 2026年10月11日)